
目次
(1)コロナ禍を経験して変わってきた、お庭とわたしたちの暮らし
(2)家にいる時間が長かったことで気付いた、暮らしの中の小さな後悔
(3)今求められている、お庭や外構の在り方。
(4)手の届く範囲から日常を愛していく。
外出を控え、会いたい人にも気軽に会えなかったあの日々。
リビングとキッチンと寝室を行き来するだけで一日が終わってしまうような閉塞感。
そんなコロナ禍を過ごしたあの日々から、数年。
気がつけば街はにぎわいを取り戻し、私たちの暮らしもいつの間にか元のリズムへと戻っています。
朝から晩まで予定に追われ、家事に仕事にと、また慌ただしい毎日。
「緊急事態宣言で外出できなかった頃が、もう5年前か…」なんてふと気が付いて、時の流れに驚いています。
けれど少し立ち止まって振り返ってみると、あの頃の経験が、私たちの暮らしの価値観を確かに変えたように思います。

コロナ禍を経験して変わってきた
お庭とわたしたちの暮らし
家の中だけで完結していた毎日。
朝の光や、午後の風の心地よさに、ふと救われたこともありました。
閉じこもることが増えた分だけ、外の世界の気配に敏感になっていたのかもしれません。
そんなとき、ふと窓の外に目を向けると、お庭やベランダという「外の空間」が、想像以上に心を和ませてくれたのです。
ウッドデッキに腰かけて夕涼みを楽しんだり、プランターにちょっと花を植えるだけで気分が変わったり。
お庭が、「ただの外空間」ではなく、「家族と過ごす大切な場所」になっていた――そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。

「子どもたちが家にこもっていられないので、庭で遊んでおいで!って言うんですが、庭から聞こえる笑い声がなんだかうれしいんです」
「旅行に出かけられなくても、デッキでチェアに腰かけて夕日を見ているだけで、ちょっと非日常を味わえるんですよ」
「家の中に親戚を呼ぶのは気をつかうけど、庭なら気楽に集まれて、みんなでおしゃべりできるのが幸せで」
そんなお声を、実際にたくさんいただきました。
リビングからほんの数歩の場所が、家族や友人とのつながりの場や、心をほぐしてくれる大切な居場所になっていったのだと思います。

家にいる時間が長かったことで気付いた
暮らしの中の小さな後悔
その一方で、「もう少しこうしておけばよかったな…」という声も少なくありませんでした。
新築するとき、コストを抑えたくて駐車場を少し狭くしたら、車の乗り降りが思った以上に窮屈だった。
毎日使う場所だから、ちょっとのことがすごくストレスになってしまっている。
雑草対策を後回しにしてたら、あっという間に草が広がってしまった。
なんとなく見て見ぬふりしてたけど、リビングにいる時間が長いと目について気になってしまう。
窓を開けてお茶でもしよう、と思っても、外からの視線が気になって落ち着かない。
せっかくウッドデッキがあるのに、洗濯物を干しているだけで、結局あまり使わなくなってしまっていた。
家にいる時間が増えたからこそ、日々の中に潜んでいた小さな不便や、「ここがもう少しこうだったら…」という想いが、よりはっきりと見えてきたのかもしれません。
庭や外構は日々の暮らしに直結するだけに、住み始めた当初の “小さな妥協” が、毎日の不便や後悔に変わってしまうこともあるんです。
実際に、私たちのところに来店されるお客様から、「ウッドデッキをつくりたい」「庭でバーベキューできる空間がほしい」「子どもをお庭で遊ばせたい」というご相談を、あの時期は本当に数多くいただきました。

今求められている、
お庭や外構の在り方。
さて、コロナ禍が明けた今。
旅行やお出かけに心が向く方が増え、外構・ガーデン工事のご相談は一時期ほどの熱気は落ち着きを見せています。
けれど、近年いただくご依頼には、その分だけ「こだわり」や「長く愛せるものを」という想いが、コロナ禍以前よりも強く込められているように感じます。
最近人気なのは、木目調のあたたかみを活かしたデザインや、グレーとベージュを組み合わせた上品な“グレージュカラー”。
さらに、日本の侘び寂びと北欧のシンプルさをかけあわせた“ジャパンディスタイル”も注目されています。
自然素材を大切にしながら、飽きずに暮らしに寄り添ってくれるスタイル――それが、今の時代が求める心地よさなのだと思います。

便利さや華やかさだけではなく、安心して心を落ち着けられること。そして、心地いい時間を家族と長く共にすることを重視する方が増えたように感じます。
お庭があるからこそ感じられる、四季の移ろい。何年経っても、ふとした瞬間に「やっぱり心地いい」と感じられる我が家。
そこには、心が休まる静けさがあり、体を整える健やかさがあり、そして親子2世代、3世代をやさしく包み込む安心感があります。
お庭や外構は、まさにそうした“心と暮らしのよりどころ”へと役割を広げてきているのではないでしょうか。

手の届く範囲から
日常を愛していく。
もちろん、気になることろすべてを大がかりに変えないで、手の届くところからで大丈夫。
足元を照らすソーラーライトを置いたり、花壇にカラーリーフをひと鉢加えるだけでも、お庭の表情はぐっと豊かになります。
何気ない日常の中で「あ、きれい」と心がほどける瞬間がふと訪れる。そんな小さな喜びこそ、暮らしを彩る大切なひとときですから。

これからお庭や外構を考える方には、成功の声も、ちょっとした後悔の声も、どちらも知っていただきたいと思います。
そのうえで、ご家族に合った形をじっくり選んでいけば、きっと長く愛せるお庭になるはずです。

お庭は、家族の思い出をまるごと受け止めてくれる場所。
だからこそ、後悔のないように、心から愛せる空間にしていただきたい――そう願っています。
私たちはこれからも、皆さまの想いに寄り添いながら、理想の暮らしを形にするお手伝いをしてまいります。
企画・編集:若柳/黒木

庭と暮らしのジャーナル
暮らしの中の小さな気付きやヒントを綴る読みものシリーズ【庭と暮らしのジャーナル】。庭や緑を入口に、“暮らす”ということを丁寧に見つめる時間をお届けします。
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